CRPS・RSDの認定が受けられない方へ

 CRPS(Complex Regional Pain Syndrome),日本語では,「複雑性局所疼痛症候群」とか「複合性局所疼痛症候群」とか言われています。昔は,RSDとかカウザルギーとか言われていました。

 

 CRPSの診断基準については,「2005年世界疼痛学科における診断基準」,「2005年IASPによる臨床目的の診断基準」が公表されていますが,診断基準としては曖昧で,しかも,CRPSを特異的に診断する検査もないことから,CRPSの診断は非常に難しいことになります。

 

 ただ,自賠責保険の認定基準では,骨萎縮(ズディク症候群)がない限り,後遺障害の等級認定が受けられません。しかし,医学的には,骨萎縮がなくても,CRPS(RSD)と診断することが可能です。裁判所も,骨萎縮(ズペック症候群)がなくても,CRPS(RSD)として認定をしてくれる場合があります。

 

 CRPS(RSD)の認定が受けられないと,後遺障害としては,どんなに重い症状が残っていても,神経症状としてせいぜい12級にしかならないのですが,CRPS(RSD)が認定されると,その症状によって9級・7級・5級・3級・2級・1級といった認定が可能になってきて,賠償額は,数倍に跳ね上がってきます。

 

 骨萎縮(ズディク症候群)がないので,自賠責保険でCRPS(RSD)が認定されないからといって,あきらめることはありません(もっとも,筋萎縮もないようでは,ちょっと無理でしょうが。)。ただ,鑑定が必要になりますし,認定基準そのものが曖昧なのですから,大変な裁判を覚悟しなければなりません。私が扱った事例でも,東京の鑑定医に2回診察に行っています。でも,賠償金は,保険会社提示の数倍になっています。手間隙をかけるだけの価値は十分にありますね。この時の依頼者の方が数年後に挨拶に来られましたが,その時にお聞きしたところ,裁判終了1年後に骨委縮が出てきたということでした(令和2年6月加筆)。

 

 なお,2005年IASPによる臨床目的のCRPS診断基準は次のとおりです。以下の4項目のうち,3項目以上のそれぞれについて1個以上の症状を含み,かつ,いずれか2項目以上に1個以上の症候を含む。自覚的徴候がある
 (1) 感覚障害:自発痛,痛覚過敏
 (2) 血管運動障害:血管拡張,血管収縮,皮膚温の左右差,皮膚色の変化
 (3) 浮腫・発汗障害:腫脹,発汗過多,発汗過小
 (4) 運動栄養障害:筋力低下,振戦,ジストニア,協調運動欠損,爪又は毛の変化,皮膚萎縮,関節拘縮,軟部組織変化

 

 また,「複雑性局所疼痛症候群の診断基準作成と治療法に関する研究」(厚生労働省科学研究こころの健康科学研究事業)の報告書が公開されています(http://hwm8.spaaqs.ne.jp/yasuyoshimitui/a0001.pdf)