症状固定と言われている方へ

 頚椎捻挫の場合には,多くの場合は,3カ月程度までに治癒していくものですが,難治例の場合には,6カ月は治療をしていないと,後遺障害の等級認定を受けることはまず無理ですので,保険会社に治療の必要性を主張して6カ月間は治療を認めてもらうべきです。高次脳機能障害については,2年近くまでリハビリテーションの効果が認められていますので,リハビリテーションの効果が上がっているのに,2年未満で症状固定にしろとか,治療費を打ち切るというのは不当です。医師や弁護士に相談して,2年くらいはリハビリテーションを続けるべきでしょう。

 

 それ以外の傷害については,概ね1年くらいまでの期間が症状固定の目安にされる場合が多いといってよいと思いますが,一人一人の顔が違うように,一人一人の症状も違いますので,医師や弁護士に十分相談することをお勧めします。

 

 特に,医師は,治療することには関心があっても,その患者が何級の後遺障害になり,どれだけの賠償金を獲得できるようになるかということには関心がないものです。そのため,「これはちょっと・・・。」という後遺障害診断書を見かけることがあります。神経根損傷が疑われるのに,「反射亢進」と記載されていたり(神経根損傷の場合には,腱反射は低下します。脊髄損傷の場合には,腱反射は亢進します。),胸腰部の可動域検査で,股関節部を曲げて検査したために,可動域が実際よりも大きく記載されていたり,筋萎縮があるのに,これを記載漏れしていたりということを経験しています。後遺障害診断書の記載内容については,後遺障害認定に詳しい弁護士に事前にチェックして貰うことをお勧めします。

 

 なお,これまでの経験で,10カ月近くも胸部打撲の痛みがとれないということでもめていた事案で,そんなに長期間打撲の痛みがとれないのはおかしいということで,骨シンチグラフィー(テクネチウムという薬剤が,骨の代謝や反応が盛んなところに集まる性質を利用して,これを注射して骨腫瘍や骨の炎症,骨折の有無などを調べる検査です。)を撮ることを勧めたところ,胸部の腫瘍が見つかったという事例や,膝関節捻挫という診断名で1年近くも治療していたが,痛みが全くとれなかったケースで,膝の内視鏡検査をしたところ,半月板損傷だったというケースもありました。半月板損傷や靭帯損傷は,見落とされやすい傷害のひとつです。十分に気をつけてほしいものです。