労災事故でもある場合,加害者の自動車保険と労災保険のどちらを使う?

 一般的には,労災保険の利用を勧めています。

 

 被害者側にも過失がある場合には,被害者側の過失分の治療費は,自動車保険利用の場合には,被害者側が負担しなければならなくなりますが,労災保険の場合には,労災保険が負担してくれることになりますし,労災保険からは,休業補償給付(休業の第4日目から1日について,給付基礎日額(平均賃金相当額)の60%)と休業補償特別支給金(給付基礎日額の20%)が支給されますが,このうち,休業補償特別支給金については,損害賠償から控除されない取り扱いになっていますし,特別年金も,損害賠償から控除されませんので,労災保険の利用を勧めています。

 

 なお,使用者から損害賠償を受領すると,最高9年間労災保険給付の支給停止がなされる場合があります。ただし,損害賠償額と労災保険給付との重複部分の支払を使用者に求めず,現実に支払いを受けなければ,労災保険給付の支給は停止されません。そこで,使用者に対して損害賠償請求を行い,和解により解決する場合には,「労災保険法・厚生年金保険法・国民年金法に基づく過去分及び将来の給付を除き,和解金として金〇〇〇円の支払義務がある。」旨の和解をすれば,労災保険金,厚生年金,国民年金は支給停止されません。これも,有効に活用すると,実際の受領額は大きく違ってきます。