自賠責保険と後遺障害等級認定
裁判所は,自賠責保険における後遺障害等級認定に必ずしも拘束されるわけではありません。しかし,両者が全くの無関係ということではありません。裁判所は自賠責保険で認定された後遺障害等級を参考にして,損害額を算定する傾向があります。
以下にて,自賠責保険と後遺障害等級認定について御紹介いたします。
○自賠責保険における等級認定
自賠責保険においては,大量の事案を処理していくという要請から,あらかじめ設定された基準に基づいて,画一的に後遺障害等級の認定がなされます。いくら症状が残っていたとしても,後遺障害に該当しなければ,後遺障害を理由とした損害賠償を請求することはできません。なお,自賠責保険の後遺障害等級認定が「非該当」になった場合であっても,訴訟において,これに拘束されずに後遺障害の認定を受けることができるときがあることは,前記のとおりです。
○自賠責保険における判断基準の具体例
当事務所においては多数取り扱っております高次脳機能障害を例に挙げると,自賠責保険においては,以下のような要素を考慮して後遺障害等級認定をしています。
・頭部への外傷
自賠責保険においては,頭部への外傷があることが認定の前提となっています。
・頭部外傷急性期における意識障害の程度と期間
1.半昏睡ないし昏睡で開眼,応答しない状態が少なくとも6時間以上 又は 2.軽度の意識障害が少なくとも1週間以上 。ただし,高齢者はこれより短くても良い
・家族や実際の介護者や周辺の人が気づく日常生活の問題
事故発生前と後の行動や人格等の変化を,家族や実際の介護者,周囲の人が気付くかどうかも高次脳機能障害の判断基準になります。
・画像所見
急性期における何らかの異常所見又は慢性期にかけての局所的な脳萎縮特に脳室拡大の進行が見られること
※
なお,最近では画像による所見が得られない「軽度脳損傷(MTBI)」が問題視されており,MTBIについては画像所見ではなく,裁判で争うしか方法がありません。
・高次脳機能障害特有の症状と各種検査
高次脳機能障害特有の症状を立証するためには,各種テストを受ける必要がございます。例えば,失語であれば失語症のテスト,注意障害であれば注意障害の内容に応じた個別のテストが行われます。感情コントロールなどの情動障害についてはテストで確認するのが困難なため,普段身近で接している御家族の体験エピソードが重要となります。そのため,何かあったらメモを取ることが大切です。
自賠責保険と後遺障害等級認定の関係について簡単に御説明しました。何か分からないこと等がございましたら,お早めに弁護士へ御相談ください。
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